となりの一条三兄弟!
狼がウサギを補食するかどうかは分からない。
少なくとも目の前に狼がいたらウサギは迷わずに逃げるだろう。でも私は……。
「な、なにするんだよ」
私はウサギたちを聖に近づけた。
「怯えないよ。怯えてないよ」
そう、たとえ彼の体に狼の血が流れていて、ウサギたちもそれに気づいていたとしても、聖に怯えたりしない。
「人間と動物だってそれなりに意志疎通ができるんだから、半分狼の聖ならもっとウサギの気持ちが分かるでしょ?だったらウサギだって、聖が怖い人じゃないって分かるよ」
きっとそうやって自分は人間じゃないからとか、自分は普通の人と違うからって、一線を引いてきたことがたくさんあると思う。
とくに聖からはそれを強く感じる。
「平気だよ。触ってみて」
私が言うと聖は迷いながらも、指先でツンとウサギの頭に触れた。
それを2回繰り返して、次に大きな手で撫でるとウサギたちはまた嬉しそうに鼻を動かしていた。
「ところでなんで鍵は壊されてたのかな?」
ウサギたちは無事に動物小屋に戻した。南京錠はすでに新しいものに交換されていた。
「あー、なんか元々錆び付いてて無理やり施錠しようとしたら壊れたらしい。んで、怒られると思って飼育委員が木の板だけを扉に立て掛けて帰ったんだって」
「……え、そ、そうだったの?」
「次の日になってウサギが逃げ出したもんだから、本当のことを言うに言えなかったんだろ」
じゃあ、この事件は変質者の仕業でもイタズラでもなかったんだ。
私なんて色々と深読みしすぎて、昴さんの料理をウサギの肉だと勘違いしたことが死ぬほど恥ずかしい……!