となりの一条三兄弟!
ペタンと力が抜けたように地面にしゃがみこむと、私の頭上が影で暗くなった。
「お前は車に轢かれてーのか」
顔を上げると、不機嫌そうに私を見下ろしている聖がいた。
「昨日アイスもらったから、その礼ぐらいしてやる」
相変わらず不器用な言い方。
だけど、分かってた。
聖は必ず戻ってくるって。その心に優しさがあることを私は知っているから。
私が熱いのか、聖の背中が熱いのかは分からない。
聖はブツブツと文句を言いながら、おんぶをしてくれていて、その大きな背中に私は身を任せている。
密着してる体が今さら恥ずかしい。
襟足がくるんっと丸くなっているのがなんだか可愛くて、いつもは見ることのできない箇所を怒られるぐらい見てしまう。
「おい」
「は、はい!?」
……ヤバい。見てることバレた?
でも後ろに目があるわけじゃないし、特殊な力があってもさすがにそれは……。
「昨日はちょっとイラついた」
「………」
続きの言葉があるのかと思って待ってみる。だけどなにもない。むしろ私の返事を待ってるようにも感じる。
「え?うん。イラついて……なに?」
「それだけだ」
「そ、それだけ?」
俺はイラつきましたって報告だけ?
いや、そんなことは知ってるよ。
朝からずっと不機嫌だったし目も合わないし、喋ったのもついさっき。
だから怒ってらっしゃるんだなあと、一日中感じていたけど……。