悪魔と魔女
「ええ。お兄様たちがこぞって私をこんなところに押し込めなければ、瞳と同じ色の湖なんてきっと見ることもできなかったでしょうね。・・・・でもですね、私に入るはずだった仕事の数々をもみ消してなかったことにするなんて、あんまりです! 全部知ってるんですからね。はぐらかそうと思っても全く無駄です」

「うん。そうだね。君に入れるはずだった仕事は、全部君のお兄さんがやってしまったみたいだね」

「あぁ。それで、フィリ兄様に長いこと会えなかったのね」

 ルシアンに一番歳が近い―――一ヶ月先に生まれていたという理由から兄になった―――フィリップの顔をずいぶん見ていないことをルシアンはいまさらながらに思い出した。

「じゃなくて・・・責任転嫁しないでください。アルバートさま。ネタは上がってるんですよ」

 足を組み替えたアルバートは興味深そうに顔を向けた。

 いつにも増して美貌三割り増しの青年は、それで、と話の続きを促す。

「とにかく、あの人たちが何を言ったのかはわかりませんが」

「彼らは君が大好きだから」

 そういって話をずらそうとして、ずらしまくって軌道修正させないのはアルバートの得意分野だ。いつの間にか本筋から話が逸れ、まったく別の話題に摩り替わっていることは珍しくない。

 けれど今回は譲れない。
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