悪魔と魔女
「そう・・・・・。じゃあ、今度は毎日来ようかな」

 何てことだ、やっぱり兄姉よりもたちが悪い。

 ルシアンは七人兄姉の末っ子で、上に三人の兄と、三人の姉がいる。

 どうしようもないのは彼らがとんでもなくルシアンを溺愛しているということである。目に入れても痛くはないどころか、はちみつ漬けにして砂糖をふりかけ、さらにビンに詰めて大事な場所に隠しておくくらい溺愛しているのである。

 それだけでもルシアンにとってはうんざりなのに。

「いいえ、結構です、アルバートさま。アルバートさまがお忙しいのは十っっ分承知しています。会社の経営もありますし、社交界にも顔を出しておかなければならないでしょう? 私のことはどうぞ、そっとしておいてください」

 むしろ、ほっといてほしい。二日に一度顔を見せるのはやめてほしい。

 アルバートのことは好きだが、これでは仕事ができないし、何のために魔女になったのかわからない。

「そうもいかないよ。――――――まあ、はっきり言ってそれはどうでもいいんだけど。ねえルシアン。先月僕が言ったことを覚えている?」

 アルバートはルシアンの右手に視線を注ぐ。けれど、そこにあったはずのものは今ない。
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