悪魔と魔女
 開け放たれた窓からは、柔らかな春の日差しと風がすっと入り込んでくる。風に揺られて白いレースのカーテンがかすかに揺れた。

 紅茶色の髪と珍しい色彩の瞳をしているルシアンは、腕を組んで仁王立ちをしていた。

彼女は現在、最近珍しいほど腹を立てていた。にっこりと笑った口元を崩さないまま、目の前の長椅子でくつろぐ人物を冷ややかな瞳で見下ろす。

「と、いうわけなんだ。ルシアン。この間の件は君が怒るのも無理ないくらい、本当に申し訳なく思ってるんだけど、君の一番上のお兄さんがね」

 別段悪びれることもなく、いつもの通りお決まりの口上を述べながら姫君をなだめようとしているのは、金髪の青年である。

 うっとりするほど美しい美貌の主は、小さな頃からルシアンの面倒を見てきた守り役で、なぜ自分の守り役などに収まっているのか不思議でならないほどの頭脳と権力、美貌を備えた青年であった。昔、何度かそれについて尋ねたことがあったのだが、彼は曖昧にはぐらかすだけで真実については教えてくれなかった。

「へぇ、そうなんですか、アルバートさま。いったいいつになったら私は仕事をすることができるんでしょうねぇ」

 嫌味である。
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