悪魔と魔女
 先月ようやく一人前に昇格したというのに、仕事はまったくやってこない。それは全てこの人たちのせいなのだ。ルシアンだって本当はこんな辺鄙なところに住もうと思って住んでいるわけではない。本当は小さくてもいいから術師が少ない町に住んで、できるだけたくさんの仕事をこなそうと思っていたのだ。なのにそれは叶わなかった。

「ここはやっぱりいいところだよねぇ。湖の近くって神秘的だよね。湖面なんか光に当たるとルシアン、君の綺麗な瞳とそっくりの色になるし」

 アルバートは目を細めてルシアンの瞳を見つめた。

 思わずルシアンはたじろぐ。

「南海の海とはよく言ったものだけれど、その蒼と碧が複雑に交じり合った色はとても綺麗だよね」

 話の筋がだんだん逸れていることにルシアンは気づいた。

 アルバートが意識していないはずがない。意図的に彼は話を逸らそうとしている。

 ぐっと握りこぶしを作り、口を開く。
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