エリート御曹司が花嫁にご指名です
一、高嶺の花の恋心
「一条さん、お食事にお誘いしたいのですが」
私、一条汐里は社屋の一階ロビーで、何度か仕事で話したことのある男性に声をかけられた。
ランチタイム終了が残り十分。金曜日の今日は行き交う社員たちもどことなくウキウキしているように見える。
そんなことを考えているときのことだった。
秘書課の大先輩、社長秘書の渋江三和子さんが隣にいる。
「あ、あの。もう食事は済ませてきましたし」
ランチはご一緒できません、ごめんなさい、という意味で頭を下げる私に、声をかけてきた男性は弱ったように手を頭にやる。目鼻立ちの整った細身の男性だ。
彼は経理・財務課に在籍で、たしか主任だったと記憶している。
「い、いいえ。ゆ、夕飯に」
顔を赤らめて緊張したように上ずる前原さんがおかしかったのか、隣の三和子さんが笑いを堪えている。
「夕食……専務の会食が突発的に入ることがあるので――」
「わ、わかりました! 申し訳ありません! し、失礼します」
まだ話している途中で、前原さんはその場から慌ただしく去っていった。その後ろ姿をポカンと見つめる私だ。
私、一条汐里は社屋の一階ロビーで、何度か仕事で話したことのある男性に声をかけられた。
ランチタイム終了が残り十分。金曜日の今日は行き交う社員たちもどことなくウキウキしているように見える。
そんなことを考えているときのことだった。
秘書課の大先輩、社長秘書の渋江三和子さんが隣にいる。
「あ、あの。もう食事は済ませてきましたし」
ランチはご一緒できません、ごめんなさい、という意味で頭を下げる私に、声をかけてきた男性は弱ったように手を頭にやる。目鼻立ちの整った細身の男性だ。
彼は経理・財務課に在籍で、たしか主任だったと記憶している。
「い、いいえ。ゆ、夕飯に」
顔を赤らめて緊張したように上ずる前原さんがおかしかったのか、隣の三和子さんが笑いを堪えている。
「夕食……専務の会食が突発的に入ることがあるので――」
「わ、わかりました! 申し訳ありません! し、失礼します」
まだ話している途中で、前原さんはその場から慌ただしく去っていった。その後ろ姿をポカンと見つめる私だ。