エリート御曹司が花嫁にご指名です
 秘書室は秘書室長が常にいて気が抜けないが、桜宮専務の存在を感じながら仕事するよりも気が楽だった。
 
 桜宮専務の動きひとつで、神経を過敏にさせてしまうから。

 執務室を出て秘書室へ入室すると、三和子さんは席を外していた。フリーデスクに着いているのは、専属秘書ではないサブの秘書が四人と、専用のデスクで仕事をしている南場(なんじょう)室長だ。

 ものすごい勢いでキーボードを打っている。先ほどのランチミーティングの議事録を作成しているのだと推測する。

 専務室を出てから淹れたミルクティーが入ったプラカップを片手に、私もパソコンの前に腰を下ろして、パスワードを入力して仕事を始めた。


 その夜、二十時三十分過ぎに帰宅した私は、両親とともに夕食を食べていた。

 職場から二十分ほどの家は、駅から七分ほどのところにある〝一条総合病院〟の横にある。
 
 代々住んでいる土地で、増築や改築などを行い、我が家は7LLDDKKと、なんとも入り組んだ間取りになっている。
 
 今は、亡くなった祖父母が住んでいた一画は使用しておらず、いずれは去年結婚した長男の尊兄さんがリフォームして住むことになる。

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