エリート御曹司が花嫁にご指名です
「当たり前だ。あんな男がいいのか? 見合い相手を探す必要はない」
「あんな男って、まだ二言三言、話をしただけです。いい人かもしれないじゃないですか。それに、お見合い相手を探す必要がないって、勝手なことを――」

 つい熱が入ってしまい、いつになく荒らげる声を、桜宮専務は静かに遮った。

「子供が欲しいんだろう? 俺と結婚すればいい」
「えっ!?」

 私は目を剥いて、美麗な桜宮専務の顔を食い入るように見つめた。
「なにを言って――」
「俺と結婚しよう。好きなだけ子供を作ってやる」

 私と結婚……? 子供を作る……?

 私の頭の中は混乱し、わけもなく、すっくと立ち上がった。

「汐里?」

 桜宮専務が不思議そうに見上げる。

「私……なんて言ったらいいのか……」

 私と桜宮専務が結婚?

「俺と結婚すると言えばいいんだ」

 桜宮専務の腕が伸ばされ、私の手首を掴んだ。そして自分のほうへ引き寄せると、私の手首の内側に唇を当て、やんわりと吸い上げてくる。

 官能的な舌の動きに、ビクンと身体が震えた。

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