エリート御曹司が花嫁にご指名です
「や、やめてください」

 私は手を引き戻そうとしたが、かえって強く引っ張られてしまい、桜宮専務の膝の上に横向きに座らされてしまった。

「せ、専務……」

 いまだかつて、こんなに密接したことはなく、端正な顔があまりにも近くて、おろおろする私だ。

 私の手首を掴み、反対の手でがっしり腰の辺りをホールドされ、身動きが取れない。

「初対面の男に、こんなに腕を露出させて。あの男は綺麗な君を抱くことしか頭になかっただろう」
「だ、抱くって。白石さんはそんなことを考えるような人ではないです」
「どうしてわかる? 男の気持ちは、無(む)垢(く)な汐里にはわからない。綺麗なうなじに、やつはドキドキしていたことだろう」

 私の手首から離れた桜宮専務の手は、髪を留めていたバレッタをいとも簡単に外した。

 ブラウンの髪がサラリと落ち、そのひと房を彼は口へ持っていく。

「いったい、ど、どうしちゃったんですか?」

 男の色気がだだ漏れの桜宮専務に、戸惑う一方なのに、身体が敏感に反応して疼いてくる。

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