エリート御曹司が花嫁にご指名です
「……私なんかを相手にしても、つまらないですよ」

 顔を見られたくなくて両手で覆うと、桜宮専務が離れていく気配を察した。彼の一挙一動にも敏感になってしまう私だ。

 桜宮専務は考え直したのだ。そう思うと、悲しくなる。

「いや。今、最高に嬉しい気分だ。俺色に染まらせることができるのだから。楽しみだな」

 え?と彼を見た途端、抱き上げられた。

「あ、あのっ」

 戸惑っている間に、テレビで境になっている向こう側のベッドに下ろされた。ベッドは大人がふたりでも余裕がありすぎるキングサイズ。

 仰向けに寝かされた私は、両肘で身体を支えて、キョロキョロと視線を巡らせる。

「け……決心が、まだ……」
「俺に任せておけ。決心してするもんでもない」

 いえ、私にとっては、そうするものです。

 頭では考えられるのに、口から出てこない。

 まだ外は明るく、この現状はとてもじゃないけど、バージンにはレベルが高すぎる。

 桜宮専務はいつの間にかスーツのジャケットを脱いでいた。右往左往する私へと視線を向けながら、カフスを外している。男の色気がだだ洩れの動作だ。

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