エリート御曹司が花嫁にご指名です
「本当に……お願いします」

 静かに口にした汐里の身体がグラリと揺れた。俺は瞬時に立ち上がり、ローテーブルを飛び越え、すんでのところで彼女の肢体を支えた。

「汐里!?」

 腕の中の彼女は意識を失っており、額から汗の粒が浮かんでいた。

 俺は手のひらを置き、熱を確かめた。手のひらに高い熱が伝わってくる。

「っ……!」

 汐里を抱き上げると、専務室を出てエレベーターに向かう。

 途中、秘書課の者たちに会い、秘書室長に連絡するよう指示をし、やってきたエレベーターに乗って、地下駐車場へ下りた。

 車の助手席に汐里を座らせ、シートベルトを装着し、背を倒した。そして急いで運転席へ回った。

 社屋の駐車場から幹線道路へ車を走らせ、ステアリングの通話スイッチを押す。かけた相手は壮二だ。

 手術中であれば出られないが、壮二の声がすぐに聞こえてきた。

『優成さん? こんな時間にどうしたんですか?』

 こんな朝に電話をかけることはなく、壮二は不思議そうだ。

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