エリート御曹司が花嫁にご指名です
「しっかり休養するように」
「はい……ありがとうございました」

 小さく頷き、俺は処置室を後にした。壮二に見送られ、車寄せに停めたままの車に乗り込んだ。



 一時間で会議を終わらせ、執務室に戻った俺は壮二に電話をかけた。汐里の症状が心配で、会議中もずっと気になっていた。

 壮二は電話で、軽い熱中症から脱水症状を起こしていたと言った。

「熱中症?」
『そうなんです。昨日、しおりん、友人に頼まれて乗馬クラブでモデルをしたんですよ』
「モデル?」

 学生時代はずっと乗馬をしていたのは知っていた。それも競技に出て賞を取るほどの腕前だと。

『二ツ木乗馬クラブの、ホームページのリニューアルに駆り出されたんですよ。プロのカメラマンに撮られるので、極力汗をかきたくないと、水分をあまり飲まなかったようで、昨晩少し具合が悪かったんです』

 壮二の話に、俺はこれ見よがしにため息を漏らした。

「じゃあなぜ今日出社させたんだ! お前は医者だろう?」
『俺は呼び出されて朝はいなかったので。俺がいたら、出社させませんでしたよ』

 壮二なら、そうしただろう。

「そうだな。お前がいたら即座にベッドに行くように言っていたな。体調が戻っても明日は休ませるんだ。わかったな?」
『もちろんです。ビシッとしおりんに言っておきますから』
 
 壮二はしっかり俺に約束をして、電話を切った。


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