エリート御曹司が花嫁にご指名です
 俺は汐里の華奢な手首を掴んだ。そして引き寄せると、手首の内側の柔肌に唇を当て、やんわりと吸い上げた。彼女の全身がビクンと揺れた。

 汐里から漂う香りと可愛らしい反応に、俺は抑えが利かなくなりそうだ。

「や、やめてください」

 逃げようとする手首を引くと、俺の膝の上に倒れ込んだ。

「せ、専務……」

 狼狽している顔や、耳から胸までがピンク色に色づいている。

 もう抑えは利かない。俺は汐里が欲しい。

「初対面の男に、こんなに腕を露出させて。あの男は綺麗な君を抱くことしか頭になかっただろう」
「だ、抱くって。白石さんはそんなことを考えるような人ではないです」
「どうしてわかる? 男の気持ちは無垢な汐里にはわからない。綺麗なうなじに、やつはドキドキしていたことだろう」

 バレッタをカチッと外し、ブラウンの髪が解放され、シャンプーのほんのり甘い香りが、ふんわりと鼻をくすぐった。

 俺は艶やかな髪をひと房、口元へ持っていく。
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