エリート御曹司が花嫁にご指名です
「結婚式場探し……」
「挙げないと思っていたのか?」

 桜宮専務とこういうことになって、戸惑いを隠せない私だ。身体を重ねたら、気持ちまで欲しくなってしまう。

 彼への愛おしさが沸々と込み上げる。

 私のこの想いはどうしたらいいの……?

 桜宮専務は結婚式を挙げ、子供を作ればいいと思っている……。それだけでは嫌……。

「どうした?」

 私の顔を覗き込み、ちゅっと唇にキスが落とし、離れていく。

 これからはずっと桜宮専務と一緒にいられるの?

「汐里はどんな式を挙げたい? 教会か? 神前か? 好きなほうでいい。ドレスも和装も、汐里ならどちらでも似合うだろう。いっそ、両方着ても構わない」

 髪の毛を優しく梳(す)かれ、ゆっくり触れられている私は、彼の規則正しい心音を感じながら、私たちの結婚式を想像してみる。

 結婚しようと言われて幸せなはずなのに、重い気分になっている。

 朝陽さんと砂羽さんのように教会のチャペルで愛を誓い合うのは、神への冒涜のような気がしてきたのだ。

 桜宮専務は私を愛していない。ずっと持っていたおもちゃを他の男性に取られたくないだけ。
 でも、私はその思いに便乗する。

 愛されてしまった私は、欲張りになっている。ずっとそばにいてほしいと。


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