エリート御曹司が花嫁にご指名です
 リビングでは社長――お義父さまが待っていて、私たちの姿にソファから立ち上がった。

 エアコンが効いた室内に、汗がスーッと引いていく。

 お義母さまと一緒で、嬉しそうな笑みを浮かべているお義父さまは、近づいてきて私の両手を大きな手で包み込み、満足げに口を開く。

「汐里くん、いや、これからは汐里さんと呼ばせてもらうよ。いやー、こんな嬉しいことはない。優成から聞いたときは耳を疑ったよ。担がれたのかと思ったが、本当のようだ。よろしく頼むよ」
「ありがとうございます。おふたりが喜んで迎えてくださるので、ホッとしています」
 
 優成さんは私をソファに座るように促す。

「汐里は小さい頃から、両親たちのお気に入りだったんだ。この反応は予想できたよ」
「だが、お前たちから恋愛の雰囲気はまったく見えず、やきもきしたぞ? 今まで待たせおって」
「今日はいい日になったでしょう?」

 お義父さまの恨み言を、サラッと笑って受け流す優成さんだ。

「あなた。あなたの好きな〝青井〟のみたらし団子を汐里さんは買ってきてくださったのよ」
「そうか! 夕食前だが、一本いただきたいな」
 
 仲のいいご夫婦だと、いつも思う。

「そうしましょうか。今、温かい緑茶を淹れますから」

 お義母さまがソファから立ち上がり、私も急いで立ち上がる。

「私が――」
「いいのよ。頼んでくるだけですから、汐里さんはおかけになっていて」

 そう言ってお義母さまはリビングを離れた。

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