エリート御曹司が花嫁にご指名です
「用意を……?」
「ああ。午後に行ってきたんだ。汐里に選ばせれば遠慮すると思ってね。まあそれよりも、君がつける指輪は俺が選びたかったんだ。サイズが合うといいが」


『君がつける指輪は俺が選びたかったんだ』


 優成さんの言葉は簡単に私を喜ばせる。

 私は左手をそっと差し出した。彼の手に左手が優しく握られる。

 ソーラーライトとお屋敷の窓明かりだけなのに、大きなダイヤモンドの周りを、それよりも小さなダイヤモンドがグルッと施されているエンゲージリングは光り輝き、私は目が釘付けになった。

 その美しい指輪は、私の左手の薬指に収まった。

 まるでダイヤモンドの花のようなデザインは、私もひと目見て惹かれた。

「優成さん、ありがとうございます。とても素敵な指輪で……なんて言ったらいいのか……」

 心から嬉しいのに、ちゃんと口に出して言えないのがもどかしい。言ってしまったら、私がどんなに優成さんを愛しているかを知られてしまうから。

 優成さんが私と結婚する理由は、〝愛〟ではないから。彼は私を愛しているわけではなく、赤ちゃん――長男としての後継ぎが欲しい。

 そして、家を守る従順な妻がいれば、仕事に集中できる。

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