エリート御曹司が花嫁にご指名です
 私が愛を告白したら、その愛に応えられない優成さんは困って、逃げ腰になってしまうのではないか、と恐れる気持ちもある。

「少し緩いか?」
「いえ、これで大丈夫です」

 私の指は運動をしていたせいか、スラリとしてはいなくて、節が張っている。これ以上指輪が細ければ、節のところで止まって、ちゃんと収まらなくなりそうだ。

 指は少しコンプレックスがあり、少しでも綺麗に見せたくて、ネイルにも気をつけていた。

「結納の日取りの件、ご両親に伝えておいて」
「はい。聞いておきます」

 結婚を決めたのなら早いほうがいいというお義父さまの考えで、結納の日取りを遅くても九月上旬に済ませたいと、先ほど話していた。

 そこで優成さんはポケットからスマホを取り出した。スマホは振動している。

「朝陽だ」

 優成さんはスマホをタップして、電話に出る。

「もしもし? ああ。もう聞いたのか。まったく、結婚のこととなると、親父は電光石火のごとく言いふらすな」

 優成さんと朝陽さん兄弟は、とても仲がいい。

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