エリート御曹司が花嫁にご指名です
 笑顔で話をしている優成さんに、ぽうっと見とれてしまっていると、彼の視線が私に向き、ドクンと心臓を跳ねさせてしまった。

 慌てて視線を逸らしでもしたら、私の様子が手に取るように優成さんにはわかってしまう。

 私は落ち着きはらったように見せ、「なに?」と小首を小さく傾げた。

「汐里、朝陽が話したいと言っている」

 優成さんはスマホを私に手渡す。

「お電話変わりました。汐里です」
『汐里、いや、もうお義姉さんかな。婚約おめでとう』
「朝陽さん、ありがとうございます」

 私のほうが年下だけれど、いずれは朝陽さんの義姉になる。当分慣れないだろう。

『日本にいたら、すぐにでも砂羽と一緒にお祝いに駆けつけたかったんだけどね』
「フライトだったんですね。お疲れさまです」
『近いうちに四人で食事をしようと、兄貴に言っておいて。じゃあ』
「はい。お気をつけてお帰りくださいね」

 朝陽さんは『もちろん』と言って、通話が切れた。

「すみません。電話が切れて」

 まだ話をしたかったかもしれない優成さんに、スマホを戻しながら謝る。

「いや。俺よりも汐里と話をしたかったんだろう」
「近いうちに四人で食事をしようとおっしゃっていました」
「そうしよう。さてと、ここは暑いな。部屋へ戻って冷たいものでも飲もう」

 先に腰を上げた優成さんは、私を立たせる。私の背に手を置いた優成さんは、家へと向かわせた。

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