エリート御曹司が花嫁にご指名です
私って矛盾している……。すぐにでも退職しようとしていたのに。
「わかりました。それでは私は秘書室におりますので、ご用の際にお呼びください」
本日の優成さんのスケジュールは、午後のフライト就航地を決める重役会議だけ。
「ああ。わかった」
頭を下げて優成さんから離れ、自分のデスクの上の書類を抱えると、専務室を後にした。
私は秘書室の隅のフリーデスクで仕事をしている。
南場秘書室長のデスクに、もちろん彼はいない。優成さんの執務室で、私の後任を人選しているだろう。
部屋にいるのは私を含めて五人。受付や外線の電話応対を彼女たちはしているので、専務の専属秘書の私は自分の仕事に従事できる。
彼女たちで応対できない場合のみ、電話に出ることもあるが。
彼女たちの中から、誰かが専務秘書になる。
カチャカチャと、いつになくキーボードを強くタイピングしてしまうのは、言いようのないやり場のない気持ちから。
はあ~、と重いため息が無意識のうちに出たとき、隣に誰かが座った。
「どうしたの? そんな顔して」
小声で聞いてくる三和子さんだった。
「結婚が決まった幸せいっぱいの女性に見えないわよ。バツイチの私でさえ、今の時期はふわふわ地面から浮いていたもの」
「……いろいろ考えてしまって、ふわふわ感はまったくないです」
私はキーボードを打つ手を止めて、苦笑いを浮かべる。
「わかりました。それでは私は秘書室におりますので、ご用の際にお呼びください」
本日の優成さんのスケジュールは、午後のフライト就航地を決める重役会議だけ。
「ああ。わかった」
頭を下げて優成さんから離れ、自分のデスクの上の書類を抱えると、専務室を後にした。
私は秘書室の隅のフリーデスクで仕事をしている。
南場秘書室長のデスクに、もちろん彼はいない。優成さんの執務室で、私の後任を人選しているだろう。
部屋にいるのは私を含めて五人。受付や外線の電話応対を彼女たちはしているので、専務の専属秘書の私は自分の仕事に従事できる。
彼女たちで応対できない場合のみ、電話に出ることもあるが。
彼女たちの中から、誰かが専務秘書になる。
カチャカチャと、いつになくキーボードを強くタイピングしてしまうのは、言いようのないやり場のない気持ちから。
はあ~、と重いため息が無意識のうちに出たとき、隣に誰かが座った。
「どうしたの? そんな顔して」
小声で聞いてくる三和子さんだった。
「結婚が決まった幸せいっぱいの女性に見えないわよ。バツイチの私でさえ、今の時期はふわふわ地面から浮いていたもの」
「……いろいろ考えてしまって、ふわふわ感はまったくないです」
私はキーボードを打つ手を止めて、苦笑いを浮かべる。