エリート御曹司が花嫁にご指名です
「準備しておきます。どこへ……?」
「宮古島へ行こう。夏を楽しまないとな。後で迎えに行く時刻を知らせる」
「はいっ」
 
 先ほど鬱々とした気持ちで入室したのに、今はすっかり晴れている。
 
 久しぶりの沖縄だし、隣には優成さんがいる。とても楽しみになって、執務室を退出した。


 その日の夕方、秘書課の会議で集まった際、専務付きの秘書となる宮本さんへの辞令が南場秘書室長によって知らされた。

 彼女は信じられないような表情で、椅子から立ち上がり、「精いっぱい務めさせていただきます。一条さん、ご指導よろしくお願いします」と頭を下げる。
 
 南場秘書室長は私の対面で、彼の隣に座る三和子さんは驚いた様子で目を剥いていた。
 
 三和子さんは、桜宮専務の専属秘書には、宮本さんが一番ふさわしくないと言っていたからだ。
 
 そして社内メールで知らされた私と優成さんの婚約も、もう一度南場秘書室長から発表され、その場にいたスタッフから「おめでとうございます!」と祝福を受ける。

「宮本さん。月曜日から、一条さんの下についてください」

 南場秘書室長は彼女に指示した後、私に視線を向けた。

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