エリート御曹司が花嫁にご指名です
「ですから、男性と旅行に来るなんて初めてのことなので、よくわからなくて……」

 次の瞬間、私は優成さんの腕の中に閉じ込められた。

「汐里、本当に可愛すぎるな。戸惑っていたわけか。それとなく見当はついていたが」

 額に優成さんの唇を感じた。

「……はい。旅行は来たかったんです。でもいざとなったら、どんなふうにすればいいのか……」
「いつものように普通にしていればいい。汐里が楽しめるように決めたプライベートヴィラだからな。人の目を気にしないで済む。おいで。シャンパンを開けて、景色を眺めよう」

 優成さんと手を繋ぎ、寝室の一面の窓から外へ出る。そこには南国の花が浮かべられたジャグジーがあり、その先には幅五メートル、長さ十五メートルくらいのプライベートプールがあった。

 信じられないくらい豪華なヴィラに息を呑(の)む。

「こんなヴィラがあるなんて……」

 ホテルのにぎやかなプールとは異なり、ふたりだけのプールだ。

「ここで待っていろ。シャンパンを持ってくる」

 黒のゴージャスなラタン材のソファに座らされ、優成さんは私から離れていく。仕方なくそのソファに留まり、辺りへ視線を向ける。

 ようやく平常心で景色を眺めることができた。

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