エリート御曹司が花嫁にご指名です
 遠くに宮古島の透き通った海が見える。ところどころにブルーやグリーンに色を変えている静かな海だ。

 宮古島へは初めて来た。真夏の日差しは肌を刺すくらいに痛いけれど、日陰は爽やかな風が頬を撫で、気持ちがいい。

 毎日エアコンの冷気に晒されていると、こういった自然は身体が欲していたようで、大きく深呼吸をしたくなる。

 一泊しかいられないなんて……。

 この贅沢な旅行を楽しまなくては、もったいない。まだ婚約者としての関係には慣れないが、優成さんと一緒に目いっぱい楽しみたい。

 最初からそう思っていたけれど、いざとなると緊張感に襲われて、ぎこちなく優成さんに接していた。でも、優成さんはわかってくれている。

 そこへシャンパンのボトルとグラスふたつを手に、彼が戻ってきた。

 紺色のポロシャツから出ているグラスを持っている腕に、ドキッと心臓が跳ねる。

 優成さんはジムで身体を鍛えていると、朝陽さんから聞いたことがある。もちろんパイロットの彼も、日々の体調管理に厳しく、ジムへも通っているそうだ。

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