エリート御曹司が花嫁にご指名です
 白いTシャツとジーンズ姿の優成さんは、きちっとスーツを着ているバトラーとは正反対だけれど、優雅に見える。

 私が近づくと、バトラーがテーブルのほうに移動して、椅子を引いてくれた。優成さんも対面に座る。

 そのテーブルは炭火焼きができる仕様で、美味しそうなお肉と海鮮が用意されていた。すでに炭はいい色になっていて、焼くばかり。

 上品なグラスに、きめの細かい泡立ちのビールが置かれる。

「宮古牛は脂のうま味も楽しめるらしい。後は自分たちでできるので大丈夫です」

 優成さんは私に言ってから、そばに立つバトラーに声をかけて、下がってもらった。

 四角い網の上に、脂がほどよく入った牛肉や海老、野菜をトングで載せていく優成さんに、私もと、トングを手にする。

「汐里はやらなくていいよ。食べることに集中して」
「でも……」
「今は秘書じゃない。俺がやるから、たくさん食べて」

 あっという間に、お腹を刺激するいい匂いが漂ってくる。

 軽く焼いた宮古牛が皿にサーブされる。

「塩やシークワーサーが合うらしいよ」
「はいっ。いただきます」

 私は優成さんに甘え、トングから箸に変えて、宮古牛を口に入れた。

「とても美味しいお肉です。こんな美味しいのは今まで食べたことがないです」

 口の中でとろけていき、思わず顔をほころばせる。

 優成さんも食べて、「うまい」と声を漏らし、満足げな表情になった。

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