エリート御曹司が花嫁にご指名です


「汐里、プールで泳ごう」

 優成さんが私をプールへ誘ったのは、満足のいく夕食後、二時間ほど経ってから。

 運動は嫌いではない。せっかくプールがあるので、泳ぎたいと思っていたところだった。

「着替えてきますね」
「OK。先に泳いでいる」

 私はソファから離れて、キャリーケースから水着を取り出し、パウダールームで着替えを済ませる。

 水着は去年、バカンスで訪れたバリ島で買った茶色をベースに、緑色や黄色のストライプが入ったビキニだ。

 あのときはこれを身につけていても気にならなかったのに、今こうしてビキニを身につけて鏡に映る自分を見ると、かなり際どく攻めた水着姿だった。

 裸も見られているんだから、どうってことない。そう考えても、この露出した姿を優成さんに見られるのは恥ずかしくて、Tシャツを上から着て、パウダールームを後にした。

 リビングから出ると、優成さんはプールで泳いでいた。さほど大きくないプールをのびのびとクロールで水をかいている。

 スピードもある泳ぎは、選手のように見事だった。

 見とれているうちに、優成さんはターンをして、こちらに戻ってきていた。

 水しぶきを上げて、彼は私の前に立った。

「なぜTシャツを?」

 私の考えはお見通しといった目線の優成さんは、答える間も与えずに、Tシャツの裾から手を忍ばせた。

 濡れた冷たい手に、ビクッと身体が震える。

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