エリート御曹司が花嫁にご指名です
振袖を着るのは、二十歳の成人式以来。薄紫と濃い紫を使った総絞りの振袖は、金の御所車や松竹梅の縁起のいい柄だった。
もったいないことに、今回で着るのは二回目になる。友人の結婚式に何度も出席しているけれど、振袖を着ることはなかった。
汚れや着崩れに気をつけなくてはならないし、二次会まで参加すると、堅苦しさで耐えられなくなる。それが理由だった。
でも、美しい振袖を今、身につけてみて、もっと利用すればよかったと後悔した。
朝から自宅の和室で着付けの先生を呼び、髪もお母さんの行きつけの美容院のオーナーに出張してもらった。
結納の場所は、AANのホテルの庭園にある数寄屋造りの料亭で、当事者と両親のみ。略式の結納となっている。
着付けが終わり、和室を出ると、リビングから壮兄が出てきた。
「はあ~。しおりん、綺麗すぎる」
壮兄は重いため息をつき、やんわりと笑みを浮かべて褒めてくれる。
「二十歳が一番似合うよね。二十八歳で振袖って、少し恥ずかしいの」
「そんなことないよ。しおりんならきっと、四十歳になっても似合うと思う」
大げさな壮兄に、私はふふっと笑う。
「妹びいきの兄がいて、本当に幸せよ」
そこへ玄関のほうから、お父さんが私を呼ぶ声が聞こえてきた。
もったいないことに、今回で着るのは二回目になる。友人の結婚式に何度も出席しているけれど、振袖を着ることはなかった。
汚れや着崩れに気をつけなくてはならないし、二次会まで参加すると、堅苦しさで耐えられなくなる。それが理由だった。
でも、美しい振袖を今、身につけてみて、もっと利用すればよかったと後悔した。
朝から自宅の和室で着付けの先生を呼び、髪もお母さんの行きつけの美容院のオーナーに出張してもらった。
結納の場所は、AANのホテルの庭園にある数寄屋造りの料亭で、当事者と両親のみ。略式の結納となっている。
着付けが終わり、和室を出ると、リビングから壮兄が出てきた。
「はあ~。しおりん、綺麗すぎる」
壮兄は重いため息をつき、やんわりと笑みを浮かべて褒めてくれる。
「二十歳が一番似合うよね。二十八歳で振袖って、少し恥ずかしいの」
「そんなことないよ。しおりんならきっと、四十歳になっても似合うと思う」
大げさな壮兄に、私はふふっと笑う。
「妹びいきの兄がいて、本当に幸せよ」
そこへ玄関のほうから、お父さんが私を呼ぶ声が聞こえてきた。