エリート御曹司が花嫁にご指名です
 翌朝、秘書室にいる私の元へ、シュンと顔を曇らせた宮本さんがやってきた。

 ベビーピンクのツーピースに、肩より少し長い髪は緩く巻かれていて、女性らしいファッションだ。
 
 私はグレーのツーピースに、髪はバレッタでひとつに留めている。宮本さんと比べてみると、地味で三歳差の若さは大きいと感じる。
 
 色味の綺麗な服を着て、髪をまとめなければいいというものでもないし……やはり年齢は大事よね。

「一条さん、おはようございます」
「おはよう。宮本さん」
「あの、コーヒーをお願いしていいでしょうか?」
「どうしたの?」

 優成さんのコーヒーの好みは、しっかり教えたはずだった。

「美味しく淹れられなくて。もう二回も淹れ直しを。そうしたら、一条さんに淹れてもらえと」

 私も、何度も淹れ直しをさせられたことを思い出した。

「わかったわ。もう一度教えるわね」

 私は宮本さんを伴い、秘書室を出てカフェスペースに向かった。

 コーヒーマシンの前に立ち、豆と濃さを選ぶ。

「専務は酸味が好きではないの。濃いめで」

 私は優成さんの好みの豆と、濃さのスイッチを押した。

「あ! 私、こちらの豆にしていました。すみません」

 コーヒーマシンは音をたてて、紙のカップに抽出し始める。

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