エリート御曹司が花嫁にご指名です
「お砂糖はこのティースプーンの摺り切りで三分の一だからね」

 彼女には何回か教えているが、覚えることが多いので仕方がないと考えながら、砂糖を入れ、木のマドラーでかき混ぜて、蓋をした。

「わかりました! ありがとうございます。あの、今日のランチ、ご一緒していただけませんか? もっと桜宮専務の好みや注意点を教えていただきたいんです」
「いいわよ。外に出ましょう」
「はい。では、桜宮専務に持っていきます」

 宮本さんはトレーにカップを載せて、急ぎ足で去っていった。


 優成さんに書類を届けに執務室を訪れた。昼食時間の五分前だ。

「失礼します」

 ノックの後、入室すると、優成さんの姿がなかった。

「一条さん、お疲れさまです」

 椅子から立ち上がる宮本さんは、出入口に立つ私に近づく。

「桜宮専務、少し前に出かけられたんです。ランチに約束があるとかで」
「そうなの……わかったわ」

 執務デスクに歩を進め、書類を置いてから宮本さんへ向き直る。

「もう十二時ね。ランチに行きましょうか」
「はいっ」

 ニッコリ笑顔になった宮本さんはデスクに戻り、バッグを手にする。

 なにが食べたいかなどと話しながら、専務室を後にした。

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