エリート御曹司が花嫁にご指名です
 優秀な人材をヘッドハンティングすることもあるが、それは人事部の仕事で、直接優成さんがすることはない。

「ええ。とても綺麗な方なんです。写真だけしか拝見していませんが。CAですものね」

 宮本さんが書類を見ていて、私は知らなかった……。あ、昨日、人事の件でと優成さんは話していた。このことなの……?

 専務専属の秘書として疎外感を受けてしまった私は、言葉を失った。

 愕然としたところへ、店員がオーダーしたメニューを運んできた。

「あ、海老チリが来ましたよ」
「え? あ、食べましょう」

 我に返り、宮本さんに勧めてから、私も箸を手にした。

 裏方に回ったときから、こういったことを覚悟はしていた。けれど、気持ちは滅入っていくばかりだ。

「桜宮専務、お電話でとても親しそうでした」

 私の気持ちに追い打ちをかけるような言葉だった。

 優成さんが親しく話す女性に嫉妬心が芽生えてしまい、無理やり押し殺す。

「……以前、わが社にいたのなら、知り合いでもおかしくないわね」

 心を落ち着けようと、もう一度ジャスミンティーの湯呑みへ手を伸ばし、ゴクンと喉へ流し込む。

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