エリート御曹司が花嫁にご指名です
「隣にいる綺麗な人は……あっ! さっきお話しした西尾さんです」
 私は優成さんの隣に立つ女性の顔に釘付けになった。

 あの人は……以前、優成さんとお付き合いをしていた……。

 私が優成さんの秘書になって三ヵ月ほどが経った頃、一度だけ見かけたあの人だわ!

 思わず足を止めてしまっているうちに、優成さんと彼女はやってきたエレベーターに乗って姿が見えなくなった。

「あのエレベーターは重役階ではないですね。どこへ行ったんでしょうか……?」

 隣に立つ宮本さんは不思議そうな声だ。

「宮本さん、行きましょう」

 私の頭には今の光景が鮮明に映し出されていたけれど、ずっと突っ立っているわけにもいかない。

 一気に重くなった身体を動かして、重役階のエレベーターの前に移動した。ボタンを押す左手の薬指には、エンゲージリングが輝いている。

「婚約者が綺麗な女性と一緒にいたら、複雑ですよね」

 宮本さんに同情され、平常心が戻ってくる。

 確かに優成さんと元カノが一緒のところを見て、衝撃を受けたが、仕事上のことだと自分に言い聞かせた。

「先日、長年勤めてこられた方が辞められたから、優秀な教官が必要だったのよ。あ、来たわ」

 エレベーターのドアが開き、私が乗り込むと、宮本さんも後に続いた。

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