エリート御曹司が花嫁にご指名です
 私たちの前には、堂島さんと岡田さんが腰を下ろし、パールやスワロフスキーの見本をテーブルの上に並べている。

「抜群のスタイルなので、特にお似合いになると思いますわ」

 堂島さんはスケッチブックの上で、鉛筆をサラサラと走らせている。

 そこで優成さんが、ふいにポケットからスマホを取り出した。彼の手の中にあるスマホが振動していた。

「ちょっと電話に出てくる。失礼します」

 優成さんは私に声をかけてから、堂島さんたちに断り、店の隅のほうへ歩いていった。

「あの長身にスタイル、本当に婚約者さまは素敵でございますね。日本人離れした端正なお顔立ち。タキシードもフロックコートも、どんなお色でも着こなせますわね」

 堂島さんは、離れたところで私たちに背を向けて電話に出ている優成さんから、目が離せないといったふうだ。

 私が微笑んだとき、いつも冷静な優成さんが少し慌てた様子で戻ってくる。

 なにかあったの……?

「汐里、すまない。緊急の用事で行かなければならなくなった」
「わかりました。すぐに行ってください」

 理由はわからないけれど、彼の表情から察するに、大事なことに違いない。

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