エリート御曹司が花嫁にご指名です
「ありがとう。連絡する。すみません。彼女を置いていきますので、よろしくお願いします」

 優成さんは堂島さんたちに頭を下げ、大股で店を出ていった。

 あんなふうに心配そうな顔の優成さんを目にするのは、初めてだった。

 嫌な予感がするのは気のせい?

「失礼いたしました。お話を続けてください」

 忙しい堂島さんが時間を取れる日にちは少なく、私はいろいろ相談をしながら、決めていった。


 その後、どこにも寄らずにお腹を空かせたまま帰宅した。

 時刻は十二時を過ぎている。
 
 リビングに行ってみると誰もおらず、両親は朝に出かけると言っていたのを思い出した。
 
 ソファにぐったりと腰を下ろして、「はあ~」とため息をひとつこぼす。
 
 優成さんは大丈夫だったかしら……?
 
 スマホが入っているバッグを引き寄せたとき、どこかで着信音が聞こえてきた。
 
 私のものではなく、立ち上がって音のするほうへ視線を向けると、壮兄のスマホがソファの上に無造作に置かれているのを見つけた。

 鳴っているのは壮兄のスマホだ。着信は病院の整形外科のナースセンターから。

 私はタップしてスマホを耳に当て、声を出そうとした途端、向こうから話し始めてしまった。

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