エリート御曹司が花嫁にご指名です
『先生、本日入院した西尾 (せい)くんの件で聞きたいことがあったのですが』
 
 え……? 西尾……聖くん……?

「あ、あの、すみません。家族の者です。申し訳ありません。兄はここにはいないんです」
『あ! 申し訳ございません! 病院内を探します』

 急いでいる様子の看護師は通話を切った。

 西尾 聖くん……?

 優成さんの慌てた様子が、脳裏に鮮明に映し出される。

 なにか繋がりがあるような気がしてならない。壮兄もスマホをここに忘れるなんて、よほど焦って出ていったのかも、と推測してしまう。

 私は壮兄のスマホを手にして、家を出て病院へ向かった。


 一条総合病院の土曜日の受付時間は、十一時三十分まで。ロビーでは診察が終わり、会計待ちの患者さんがまだかなりいた。

 私は階段を使い、二階の整形外科へ歩を進めるが、心臓はバクバクと暴れていて痛いくらいだった。

 入院患者がいるのは三階だ。

 壮兄にスマホを渡して、話を聞こうと思ったが、二階の踊り場で足を止めた私は、大きく息を吸ってもう一階上がった。

 ナースセンターでは顔見知りの看護師が私に気づいて、近づいてくる。

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