エリート御曹司が花嫁にご指名です

九、歯がゆい想い「優成SIDE」

 汐里と結婚するということは、今までの完璧な秘書がいなくなるということだ。それが頭痛の種になった。

 俺の気持ちをわかってもらい、結婚を了承させたのは、生きてきた中で一番の仕事だと思う。

 俺以外の男の子供を彼女が産むと考えただけで、苛立ち、いや、苛立ち以上のものが込み上げてくるのを認めざるを得ない。


 俺たちの距離を今まで以上に近づけさせた短い旅行から、一ヵ月が経った。

 その間、汐里は宮本さんに業務を教え、彼女はほぼ秘書室にいる。汐里の姿を見られないことが、こんなにも寂しい気持ちになるとは思ってもみなかった。

 南場と汐里の後任の秘書を選んだ宮本さんだが、この一ヵ月で彼女はふさわしくないことを悟った。

 書類を渡すだけのことなのに、わざわざ回って俺のそばまで来る。なにかにつけてボディタッチをする女だった。

 職務中、視線を感じて顔を上げれば、彼女はハッと視線を逸らす。

 しっかり仕事をしろ、と何度怒鳴りそうになったことか。

 汐里が親切丁寧に書類作成を教えても、誤字脱字だらけ。ひどい書類を密かに汐里が直しているのも知っている。

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