エリート御曹司が花嫁にご指名です
「優成さんが……?」
「数時間のうちに出国するはずよ」
「ええっ!? ここへ来るってことですか?」
 
 私が想像していなかった展開だった。仕事を放り出してくるとは……。

「そうに決まっているじゃない。汐里を愛しているんだから」

 愛している? ううん、違う。

「汐里? ここをチェックアウトして、うちへ行きましょう。どうしてすぐに来てくれなかったの? 本当に心配だったわ」

 華さんはすっくと立ち上がり、バスルームから、使っていたものを運んでテーブルの上に置いた。

「華さんっ、私は――」

 彼女には会いたいと思っていたけれど、ハワード家に泊まるつもりなんてなかった。

「私には迷惑はかけたくないって? でも、ここに来たのは私に会いたかったからでしょう? 苦しいんでしょう?」

 突っ立ったままでいる私を、華さんは抱きしめてくれる。

「汐里は誤解しているの。兄さんが到着するまで、我が家で休んで」

 華さんは、なにがなんでも私を自宅へ連れていく意気込みだった。

 仕方なく荷物をキャリーケースに入れて、ハワード家へ行く支度をした。

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