エリート御曹司が花嫁にご指名です
 華さんはお抱えの運転手付きの大きな黒塗りの車を、ホテルの車寄せに待たせていた。

 ピカピカの車横で待っていた黒いスーツを着た男性が、私のキャリーケースを引き取る。
 
 彼は黒いスーツの屈強な体格をしていて、ボディガードも兼ねているようだ。
 
 世界でも一、二を争う航空機メーカーであるから、日々誘拐などにも気をつけなければならないと、以前華さんが言っていたのを思い出す。
 
 生活を縛られることもあって、華さんはハワード・シモンズと結婚するのを迷ったのだ。
 
 私たちが後部座席に乗り込むと、車はシモンズ家に向かった。その道中、当たり障(さわ)りない話をしていた。

 今回のことを華さんがあえて聞かないのは、私から話したくなったらでいい、というスタンスなのだと思う。
 
 そして二十分後、車は大きな自動の門を通り、坂を上がっていく。少し進むと日本では考えられないくらい大きな邸宅が姿を見せる。
 
 白亜の建物はギリシャの神殿のような雰囲気で、華さんとハワードさんの披露宴パーティーは、海を見渡せるここの裏庭で挙げた。

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