エリート御曹司が花嫁にご指名です
「桜宮さんっ!」
こちらへやってくる桜宮専務のほうへ、大塚さまは一オクターブ高い声で名前を呼び、駆け寄る。彼女は彼の前でピタッと止まり、深々と頭を下げた。
「あのときは本当に助かりました。ありがとうございます。私の代わりに怪我をさせてしまって、ずっと気になっていたんです。大丈夫でしょうか? あの、これ、有名なショコラティエが作ったチョコなんです」
心配そうな瞳を向けた大塚さまは、小さなショッパーバッグを桜宮専務に押しつけた。
先ほどの高飛車な物言いは、怪我が心配で一刻も早く会いたかったからなのかもしれない。
「バーのオーナーが俺のことを話したと、連絡があった。だが、気にしないでいい。もう傷はよくなっているので」
私はお茶の用意をするために、専務室を出ていこうとしたそのとき――。
「汐里」
桜宮専務から名前を呼ばれて立ち止まり、驚きの表情を見せないように振り返る。
「汐里、こっちへ来てくれないか」
またもや人がいるのに、プライベートの呼び名を。そこで私は悟った。私となにかあるように見せかけて、彼女の好意が無駄だということをわからせたいのだろう。
私は笑みを浮かべて桜宮専務の元へ向かった。
こちらへやってくる桜宮専務のほうへ、大塚さまは一オクターブ高い声で名前を呼び、駆け寄る。彼女は彼の前でピタッと止まり、深々と頭を下げた。
「あのときは本当に助かりました。ありがとうございます。私の代わりに怪我をさせてしまって、ずっと気になっていたんです。大丈夫でしょうか? あの、これ、有名なショコラティエが作ったチョコなんです」
心配そうな瞳を向けた大塚さまは、小さなショッパーバッグを桜宮専務に押しつけた。
先ほどの高飛車な物言いは、怪我が心配で一刻も早く会いたかったからなのかもしれない。
「バーのオーナーが俺のことを話したと、連絡があった。だが、気にしないでいい。もう傷はよくなっているので」
私はお茶の用意をするために、専務室を出ていこうとしたそのとき――。
「汐里」
桜宮専務から名前を呼ばれて立ち止まり、驚きの表情を見せないように振り返る。
「汐里、こっちへ来てくれないか」
またもや人がいるのに、プライベートの呼び名を。そこで私は悟った。私となにかあるように見せかけて、彼女の好意が無駄だということをわからせたいのだろう。
私は笑みを浮かべて桜宮専務の元へ向かった。