エリート御曹司が花嫁にご指名です
「婚活パーティーにでも参加してみようと思っているんですが」

 私の発言に三和子さんはギョッとなって、リップを持ったままこちらを向いた。

「婚活パーティーに? そんなところへ行かなくても、お医者さまの兄ふたりに紹介してもらえばいいんじゃないの?」

 その提案は絶対にあり得なくて、大きく頭を横に振る私だ。

「ふたりは絶対に紹介をしてくれません」

 優しいのはいいのだが、過保護なところがあり、私を一生独身で養ってくれるというのが彼らの口癖。三十五歳の長男・(たける)兄さんはまだマシなのだけれど、三十二歳の次男・壮二(そうじ)兄さんはひどいシスコンなのだ。

 私に恋人ができたら、どんな反応になるか怖い。そうはいっても、ふたりの意見を尊重して一生独身ってことは絶対に嫌。

 三和子さんは、「シスコンの兄たち、本当に困ったものね」と、以前から話をしている私と一緒にため息をこぼした。


レストルームを出て、三和子さんは秘書室へ。私は資料を集めている途中の仕事を終わらせるために、専務室へ向かう。

 本日は重役たちの月一回のランチミーティングで、秘書課の室長のみ同行している。

 専務室の出入口近くにあるデスクに着くと、肩をがっくり落とす。

 せっかく誘おうとしてくれていたのに……。でも、桜宮専務の名前でしっぽを巻いて逃げる男性なんて、うまくいくわけがないか。

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