エリート御曹司が花嫁にご指名です
「ふたりはお似合いだな。仲がよくてよろしい」

 桜宮専務の父親である社長だった。弟の朝陽さんに続いて、兄の桜宮専務を結婚させたがっている社長の意図が、その物言いではっきりわかった。華が必要だという意見を出したのは〝社長〟なのだと。

 桜宮専務は私をなんとも思っていないのだから、冷やかされると、穴があったら入りたい心境に陥ってしまう私だ。


 上等なシャンパンでの乾杯の後、各々が好きなお酒でコース料理を堪能している。

 フランス料理にはワインという壁が取っぱらわれていた。それはビール好きの社長が決めたよう。
 
 私は好きなシャンパンをいただき、三和子さんはポリフェノールたっぷりの赤ワイン。桜宮専務はソフトドリンクを飲んでいた。いつもなら最高級のお酒を飲んでいるはずなのに。
 
 桜宮専務以外の重役たちは、意外にビール派が多く、半数が飲んでいた。
 
 贅沢に好みの飲み物が振る舞われる中、桜宮専務が今日は自分の車を出し、お酒を飲まないことが不思議で、私はずっと考えていた。
 
 もしかしたら、今日の桜宮専務は体調が悪い……?
 
 顔色や表情は普段と変わらないけれど、お酒は強いし、付き合いがいいからこういった席では断らない。

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