エリート御曹司が花嫁にご指名です
「社長は汐里さんを嫁に迎えたがっているのが、ありありとわかるわ。これは他の重役たちへの牽制だと思っているの」

 声を低くして、周りに聞こえないようにこそこそなので、三和子さんをまじまじと見つめてしまう。

「えっ? 今、なんて……?」
「重役たちの息子や孫は適齢期の人が多いの。汐里さんは理想のお嫁さんとして人気だから、取られないようにあえて牽制しているのよ」
「そんなの考えすぎですよ」

 もしも社長がそんなことを本当に考えているのだとしたら、恥ずかしすぎる。


 飲みすぎるというほどのこともなく、美味しいフレンチを堪能して、重役たちをホテルの車寄せで見送る。

 次々に社長や重役が高級セダンに乗って帰宅する中、桜宮専務が私の前で足を止めた。

「行くぞ」
「ええっ?」

 まだ秘書たちが全員いるところへ、桜宮専務から声をかけられ、目が丸くなる。

 近くにいた彼女たちは当然のように「お疲れさまでございました」と桜宮専務に挨拶をしている。

「私は電車で大丈夫です」

「約束したはずだ」

 そんなことを言っても、私は酔っぱらっていないのに……。


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