エリート御曹司が花嫁にご指名です
 私は頭から彼女を追い出し、カフェラテやカプチーノなどを淹れることができるマシンの前に立ち、アイスメニューからブラックコーヒーのスイッチを押した。

 桜宮専務の好みは、ブラックコーヒーにほんの少しだけ甘みが感じられるのを好む。

 最初の頃は微妙な塩梅がうまくできずに、何度もやり直しをさせられていた。今ではそんなこともなく、桜宮専務の好み通りにコーヒーを淹れられる。

「どうぞ」

 淹れてきたアイスコーヒーを邪魔にならないように、そして手が届きやすい場所に置く。

「ありがとう。インターナショナルの共同運航便の報告書を頼む」
「かしこまりました」

 私は昨日ファイリングした書類がしまわれているキャビネットへ歩を進め、目的のファイルを手にして桜宮専務の元へ戻り、手渡した。

「ご用がなければ、十六時から広報課の笹島(ささじま)部長とのミーティングまで、秘書室で控えております」
「わかった」

 用事がある場合は、内線で伝えることになっている。

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