俺と、甘いキスを。
「お前が好きだ。その理由じゃ、不満か」
「…っ」
目を見てはっきりと答える彼に、息が詰まりそうになった。
一番欲しかった言葉を、一番好きな人が言ってくれた。
「好きだ」と言われることに、最大の幸せを感じる瞬間。
心臓のドキドキが止まらず、頭の中が真っ白になる。
──落ち着け、落ち着け。
私は胸に手を当てて、大きく深呼吸した。
「お前の言いたいことは、何となくわかる」
右京蒼士はそう言って、私から目を逸らした。
「わるい。今はまだAIドールの修復作業で精一杯だ。本当はこんな余裕のない俺をお前に見られたくなかった。これが終わったらちゃんと話し合いたいから、時間を作って欲しい」
それだけ言うと、仕事モードのスイッチが入ったらしく、彼は機械から流れ出るロールペーパーに再び目を落とした。
そんな彼の姿を見て、思った。
──あなたと私、それぞれ未来が決まっているのに、時間を作って何を話し合うの?
告白されたのに。
嬉しいはずなのに。
「右京さん」
彼の名前を呼んでみた。しかし反応のない彼には、聞こえていないようだ。それでも、私は口を開く。
「右京さん。私は右京さんのことが…好きです」
二回目の告白。肝心の本人はデータを見つめたまま、無言であり無視である。これではバレンタインの夜の告白と何ら変わらない。
それでも、震える唇に力を入れた。
「右京さんが好きです。ほんの一瞬でも想いが通じ合えたこと、本当に嬉しいです。私の一生の思い出にします」
泣くな。まだ、泣くな。
「右京さん、わかっていますよね?この先に、私たちに未来はないってことを。あなたと私は別の世界で生きるしかないんです」
そう。私たちに、未来はない。