俺と、甘いキスを。
夕食が終わり、居間で何気なくバラエティ番組を見ているときだった。電話が鳴って、ちょうど洗い物が終わった母が受話器を取った。
「はい、川畑です。はい、はい…まあ、いつも娘がお世話になっております」
などと丁寧な挨拶が聞こえて、私は振り向いて母を見上げた。
──「娘」というのは私のことだよね?相手は柴本さんかな?
母の話から詮索していると、
「少しお待ちくださいね」
と言って保留音にした。
「花、オオトリ電機の右京さんって方から電話よ」
「…えっ」
母の言葉に、心臓がドクンッと動く。
──右京さんが、右京蒼士が自宅に電話?
私の目の前にあるスマホは電源が入っている。あの日の文句ならスマホに電話すればいいのに。それに、彼は私の自宅の番号は知らないはずだ。
不思議に思いながら、保留音を解除した。
「…もしもし」
相手が何を言ってくるのか予想もつかないまま、緊張気味な声を出した。
すると、全く予想していない声が聞こえたのだ。
「もしもし、花ちゃん?家にいてくれてよかった。急で悪いんだけど、すぐに研究所に行ってくれないかな?」
その声は、右京誠司だった。