俺と、甘いキスを。

「……」
自分の足の長さくらいの、SF映画に出てきそうな円柱型のロボットが、大きな丸い両目で私を見据えていた。
シルバーの胴体に、その両目と逆三角形の口らしきものがあり、足元は移動可能できそうな小さなキャタピラが二つついている。
身近に初めて見るその物体に、慄いて目を見張る私。その大きな目から、ビームでも打ってくるのだろうか。

得体の知れないソレにビクビクしていると、肩に手を置かれ、フワッと抱き寄せられる。体半分が右京蒼士に密接して、じわりと半身が熱くなる。急にバクバクし始めた心臓に手を当てて右京蒼士を見上げた。
彼も少し俯いて視線を合わせた。

「こいつは「ガード」。俺の代わりに入口の番人をしてくれるAIロボットだ。社員証のデータを認識させれば、次からは窓ガラスの外から社員証を見せるだけで研究室に入れるようになる」
と、私の首に掛けた社員証のネックストラップを外した。
「ちょっ…」
なるほど、と感心している間に、彼はガードの前にしゃがみ込んで、ガードの額あたりのボタンを操作して社員証を読み込んでしまった。

「シャインバンゴウ36800751、カワバタ ハナ。インプットカンリョウ」

高い音声で話し出すガードを見守っていた私たち。右京蒼士が再び私の社員証をガードに見せると、
「ハナ、ハヤクハイレ」
と、何やら偉そうな口調で返事した。

「よし、これでいい」
彼はガードの状態を確認すると、社員証を返してくれたが…。

「いやいや、「よし、これでいい」じゃないですよね?なに勝手に私のデータを取り込んじゃってるんですかっ。てか、さっきからいろいろなツッコミどころが満載なんですけど?」
と、ガードの奥にあるドアを開けて入って行こうとする右京蒼士の後ろ姿を追いかけながら、私はすっかり頭を混乱して文句を言う。
しかし文句を言われている本人はしれっと何食わぬ顔で、
「これからは呼んでも俺が出迎える必要がなくなり効率的だろ」
と、言い始めた。
「それに、あのガードに登録されている人物は、たったの五人だ。その中の一人なんだから光栄に思え」
「はあ…?」
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