俺と、甘いキスを。
前代未聞のお見合い
三月十四日。
朝から澄んだ青空が広がる日になった。
それなのに、私は冴えない顔を浮かべている。
予約した美容院で、綺麗に結い上げてもらった髪も。
母に着付けてもらった、桜色の素敵な訪問着も。
私の顔一つで全てが台無しである。
「花、もう少し愛想良くしなさいよ」
「そんなこと言ったって……」
母の小言に、私は文句を漏らす。
腰が、痛いのだ。
痛いというレベルではなく、激痛の範囲だ。
少し濃いめに施したお化粧も、私の歪んだ顔の前では何の役にも立たない。
昨夜、あれから五時間。
私は右京蒼士に間を置かずに抱かれ続けた。甘い毒に侵され、解放された時には日も変わった夜中だった。
母が気づかないかと、ドキドキした。
私の内腿には、彼の落とした赤い花がいくつも残っている。それを今朝見つけた時には、とてつもないエロさにビックリして悲鳴を上げそうになったくらいだ。
世界にも施設がある、世に名の知れたティアラリゾートの高級ホテル、ティアラ・キャッスルホテルのフレンチレストラン。
時間より早めに着いた私たち、両親と私は後からやってきたスーツ姿の兄と合流してお店に入る。
このレストランのホールは、プライバシーを重視しているのかテーブル席が白い壁で仕切られている、半個室タイプのスタイルだ。しかし各々の個室には窓から景色が見えたり、窓辺に華やかな花が飾られたり、壁には綺麗な絵が飾られていたり、お客様を目で楽しめる工夫がされていた。
私たちが店員に案内された部屋は、お店の奥にある白い仕切りがある、大きな窓のある広めの半個室だった。窓辺にガラスの花瓶に赤と白のチューリップが上品に生けられている。
今日がお見合いという場の配慮がされているのだろうか。