俺と、甘いキスを。

──それは椿マリエさんの妊娠を気遣って、一緒にいてもっと優しくすればよかった、ということ?

胸がズキッと痛くなる。
それもそうだ。酔っていたとはいえ彼女を妊娠させたのだから、夫婦になれば愛情が芽生えることだってあるかもしれない。

そうなれば、私とこうなることもなかったのに。

椿マリエは泣きそうな顔で右京蒼士を見つめている。彼に慰めて欲しい、そんな顔をしている。右京蒼士は彼女に視線を向けることはない。
「ただ、勘違いしないでいただきたいのは、マリエをそばに置いておくというのは「彼女を大切にする」という意味ではなく……」
と、ここで彼の視線が彼女へ、氷のような冷たい視線を向けた。

「椿マリエを「監視」するべきだった、と反省しているんです」

監視。
彼女を少しも信用していないと感じる言い方に、背中がゾクリと冷たくなる。

三条美月が大きめのバッグからノートパソコンを取り出す。
「私、今回弟の依頼を受けてミラノへ行ってきましたの。弟の愚行がマリエにどんな影響を与えているか。義妹のことですので、今は複雑な気持ちです」
そう言いながら、パソコンの画面を私たちに向けた。

綺麗に着飾り、お化粧に余念がなさそうな美人な三人の外国人女性たち。そして彼女たちの目の前には美味しそうなたくさんのケーキやお菓子、フルーツの盛り合わせと数々の飲み物がずらりと並んでいた。そして各々好きなものを食べたり飲んだりして、会話が始まった。
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