俺と、甘いキスを。
すると、鳳会長は頭を揺らして「はははっ」と笑う。
「蒼士は小さい頃から機械いじりばかりして、一族に背を向けている変わり者と呼ばれているんだ。自由に生きている代わりに、鳳一族として当然与えられる権利は、誰よりも最も弱い。花さん、あなたは蒼士の何が必要かな?」
顔に深いシワを作り、口角を上げて質問をする鳳会長の視線は、私を射抜く。鋭い視線じゃないその瞳は、小さな子供に問題を与えて答えを待っているような、私を試しているような気持ちにさせられた。
──なんて、答えたらいいの?
両手にじとりと汗が滲む。
右京蒼士が鳳一族の人間であることは知っていたが、本人はそれを表に出すことはほとんどなかったため、私も気にすることがなかったのだ。
右京蒼士と接してきたことを思い出す。
右京蒼士と一緒にいたことが全て。
右京蒼士と顔を合わせて会話をしたことが全て。
右京蒼士に優しく触れてもらえたことが全て。
やはり、答えは一つなのだ。
──私は、右京蒼士が好きだ。
「私は右京蒼士さんと一緒なら、他は何も要りません」