俺と、甘いキスを。
そんな彼を、どうやら私は無意識にガン見していたようだ。
「……っ」
ほんの一瞬、その男と目が合った。
そんな気がした。
「ドクンッ」と大きく脈打つ心臓で我に返り、咄嗟に視線をお弁当に移す。
「せっかくですが、研究室に戻って資料をまとめておきたいので、また今度…」
耳心地の良い、穏やかな声が少しずつ遠くなっていった。
箸を握る指に、キュッと力が入る。
そう、今日こそ「けじめ」をつけないといけない。
既婚者である、右京蒼士に。