俺と、甘いキスを。
「目が、腫れてる」
瞼をそっと撫でられて、目を覚ます。
右京蒼士が肘枕で私を見下ろしていた。少し髪がぴょんと跳ねたその姿は、普段見慣れたものよりレアだ。その眠そうな顔も。
目が合うと恥ずかしくて、再びモゾモゾと彼へ寄り添って胸元に顔を隠す。
…あ。
──普通こういう時は、彼に背を向けるのでは…。
気づいても既に遅く。
「なに、俺を煽ってるの?」
と、両腕を伸ばして抱きしめられた。
「べっ、べつにそんなんじゃっ…」
と、慌てて顔を上げて言い訳してみる。
すぐに啄むような軽いキスが落ちてきた。とろりと甘い顔の右京蒼士の舌が、ペロリと私の唇を舐めた。
朝から糖度高めで心臓がもたない。
「今はこれで我慢する。そのうちたっぷり食ってやるから待ってろ」
そう言って私のふんわりとした髪を撫でると、ベッドから降りていった。
愛される女にとっては嬉しい言葉だが、そんな日はきっと来ない。それは私の予想している未来と、あなたの未だ左薬指に光るゴールドリングがそれを物語っているからだ。
──あなたは私が結婚しても、この関係を続ける気なの?
私は、無理よ。
右京蒼士より遅れて起き、一緒にブランチにするピザトーストとスクランブルエッグを作った。
今だけ二人だけの世界を目一杯感じていたい私は、自分の立場も彼の奥さんのことも忘れることにした。