【女の事件】豚小屋

第2話

しゅうさくが重朝あやみ夫婦の家で暮らしているのは、しゅうさくの両親・よしえと夫・ゆういちろう(45歳・工場勤務)夫婦のナマクラが原因で親子で暮らせなくなった…と言うことにしておく。

ゆういちろうは、豊田市にある自動車部品の総合メーカーの製造工場の主任だが、お給料は激安であった。

不足分を補うために、よしえがパートに出て稼いでいるが、こちらも給料は激安であった。

しゅうさくがあやみ夫婦が暮らしている家に来たのは、生後3ヶ月頃だった。

よしえはあやみに『保育園の空きが見つかるまで預かってほしい…お礼はきちんとします。』と言うた。

あやみは、保育園がみつかったら迎えに来ると思ってしゅうさくを預かった。

保育園がみつかるまで…と言うのは聞こえがよすぎるいいわけである。

ホンネは、よしえ夫婦がしゅうさくのことがキライだからどこかへ棄てようと思っていた。

だから、重朝あやみ夫婦のところに棄てた。

不審に思ったあやみは、ケーサツに届け出をして乳児院へ入れることを考えていた。

しかし、施設へ入れたらしゅうさくが不幸になると思ったので、あやみがしゅうさくを育てた。

あやみのお人よしな性格が原因で、彼女は夫や義弟の反感を買った。

あやみは、よしえ夫婦にあうたびにしゅうさくのことをめぐって大ゲンカになった。

『いつになったらしゅうさくを迎えに来るのよ!!』『義弟がものすごくイライラしているのよ!!』と言うあやみが言うと、よしえ夫婦は『もうすぐ暮らしが安定するから待ってほしい。』『しんどい。』『もうしばらく預かって…』などといいかげんな受け答えをしていた。

夫の家族のイライラが日ましに高まっているのに、あやみはシドロモドロするばかりであった。

そしてそのようになった原因がもうひとつあった。

よしえは、職場で深刻な問題を抱えていた。

よしえがパートで勤務している大型病院の調理場では、勝手に仕事を休んでいるパートさんがいることが深刻な問題となっていた。

理由もなくトツゼン休みますと言う手前勝手な従業員のせいで、深刻な人手不足におちいっていた。

だから、よしえたちが不足分をおぎなうために働いていた。

どんなにがんばってもお給料が1円も上がらない…

この時、パートさんたちの間で非常に強い不満がくすぶっていた。

どうせいと言いたいわけなのかしら…

理由もなくトツゼン休みますというパートさんは何を考えているのかしら…

面接官は、何を考えて採用しているのか…

面接官はどこのどこまでクソバカなのかしら…

事件の翌朝のことであった。

ところ変わって、小坂本町にあるあやみ重朝夫婦の家にて…

この時、よしえはあやみにしゅうさくのことをお願いをしようとしていた。

しかし、よしえの前であやみと義母が激しい声で怒鳴りあいの大ゲンカを起こしたので、話し合いができなくなった。

義母は、あやみが発した言葉に対してブチ切れたあと、ドカドカと足音を立てて居間から出ていった。

キーッとブチ切れたあやみは、よしえにすごんで行った。

「おねーちゃん!!アタシはものすごくキレているのよ!!どーしてくれるのかしら!!」
「あやみ…あやみ…おねーちゃん苦しいのよ…お願いだから…」
「おねーちゃん!!いつになったらしゅうさくをつれて帰るのよ!!」
「あやみ…おねーちゃん苦しいのよ…」
「やかましいわね!!ふたことみことめには『苦しい…』…いいわけばかりをならべないでよ!!」
「おねーちゃんは本当につらいのよ…お給料が大きく減ったから、生活が苦しいのよ…」
「やかましいわね!!それはおねーちゃんの努力不足が原因でお給料を減らされたのでしょ!!アタシ!!おねーちゃんのことを一生許さないから!!ナマケモノ!!ネグレクト!!殺してやる!!」

あやみは、よしえからものを投げつけた後電話機でよしえの頭を激しく殴りつけた。

端にいたしゅうさくがワーワーワーワー泣いていた。

よしえは、殴られぱなしになっていたので反撃することができなかった。

つらい…

つらい…

どうして実の妹から、暴行を受けなきゃいけないのよ…

アタシ…

何の落ち度もないのに…

つらい…

こんなことになるのだったら…

しゅうさくなんか生むのじゃなかった…

結婚しない方がよかった…

アタシの独身時代を返して…

アタシの独身時代を返して…
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